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日本経済新聞 6/3・4・5朝刊 「国交正常化50年 日韓の未来」 読みました。2015.6.5

 先程、梅田から帰ってきました。毎週金曜日7月中旬まで夕刻6時より1時間30分、関学梅田キャンパスで公開講座が開かれており聴講して参りました。テーマは「多言語主義・多文化共生社会」で、要するに本講座の目的は、歴史において創り出されてきた日本人の単一民族観という意識を、様々なアングルから見つめて、その意識を変えていきましょうということかと思います。

 先週と今日との2回の講座内容は、極右組織、在特会在日特権を許さない市民の会)による在日朝鮮人学校他公道での強烈なヘイト・スピーチに代表される民族差別に、在日コリアの人たち並びに彼らを支援する弁護士、知識人、賛同者がどう立ち向かい、今後さらに差別根絶のためどう取り組んでいくのかを考え、また、日本人はこの事実を知ってそれをどう考えるべきなのかを問うものでもありました。因みに講師はフリーランス中村一成(イルソン)氏という方でした。

 中村氏の活動が功を奏して、街宣車によるヘイト・スピーチは事件が起きてから5年以上を要して大幅に減少したということです。

 

 標題の日韓関係のこれまでとこれからについてですが、良好な関係を築くのは並大抵ではないと思いました。

 

 神戸大教授、木村 幹氏は、従軍慰安婦問題や戦時下の日本への労働者動員に代表される日本の植民地支配がもたらした歴史認識問題の両国間における齟齬が、両国間の良好な関係構築に支障をきたしているとして懸念を示している。しかし国交正常化した50年前と比べると現在における韓国の国力が上昇し、一人当たりのGDPは両者は拮抗してきたという。また軍事費も日本に接近しており将来的には逆転するのではないかという。日本の国力が衰退したということもあるが、韓国のそれが上昇機運にあるとみる。

 実際、韓国は日本に対して竹島(韓国名:独島)を実効支配していることは、韓国がここに来て攻勢に出ていることの表れともいえる。一方、日本は一般に円安基調でウォンに対しても同様である。円の価値が下がってきていることからも日本の経済が陰りを見せていることは否めない。

 

 早稲田大学教授、深川 由起子氏は経済問題への提言をしている。韓国の産業構造は日本のそれに類似してきて、急成長を成し遂げている。そのため一人当たりの購買力平価では両国は並んだ。しかし日本にとって韓国が経済関係における最大のライヴァルと見てはならないという。むしろ相互において産業構造における棲み分けがうまく行われており、例えば、電子機器におけるプロセッサーは日本が、メモリーは韓国が生産して棲み分けるといったような、両国のグローバルな意味においての産業構造における共存というあり方は興味深いものと考えている。

 

 世宗研究所所長、陳 昌洙氏は、日韓関係をそれ自体だけで考えてはならず、グローバルに考える必要があるとしている。安倍首相、朴大統領の政策に、それぞれの国民が相手の国のトップに対して不信感を募らせた結果、その不信感が国民に対しても向けられ波及している状況にある。両国の関係をこのまま悪化させていくわけにはいかない。

 元々日本には敗戦後から一貫して続いているアメリカとの緊密な関係があり、韓国には近年において中国に接近しているという現状がある。その一方、日本は中国との関係も近年経済によって結びつきを強めようとしている(日本の訪中団の習主席への訪問)。また韓国は中国とともにアメリカに訴えかけて、アメリカが安倍首相の靖国参拝を諌めて韓国(中国等も含む)に対して配慮を示した。つまり日韓だけで日韓問題を考えることが出来なくなっている。最近では中国は、AIIBを設立して東南アジアを中心にインフラ整備を大々的に展開しようとして投資を求めたところ、韓国は勿論のこと西欧のみならず多くの世界各国から参加表明がなされた。正に日本が韓国について考えるということは、主として中国を通してグローバルな問題となっていることを認識しなければならないという。

 

 日韓の関係において、日本が経済問題を重視したいのであれば、あるいは重視していく必要があることは経団連などの経済団体は百も承知であるはずなので、その前提として、日本が韓国に対して歴史認識問題やhate speechに見られるracial prejudiceをどう克服していくのかを真剣に考えているという本気の姿勢を示すことで、人間としての感情ではなく理性の問題に訴えかけていくことからまずは始めていく必要があると思いました。日本の過去の歴史に反省を行うことは決して自虐史観などではなく、他国の名誉を回復させる「他尊史観」といえます。相手を認めて信頼は築かれ、経済も政治も文化も隣人という他者性感覚も涵養され、時間の経過とともに良好な関係が結ばれていくのです。