政治と経済、戦争と平和 2016.7.19

f:id:flower-blossom:20160719005148j:plain

 

 先の参議院選挙で自民党は勝利したといえる。改憲が一つの主要な争点となった今回の選挙。改憲勢力が参議院憲法改正の発議を行うことのできる議員全体のほぼ2/3を占めるに至ったからだ。イギリスにおける国民投票の結果EUから離脱するというショッキングな事態は世界を混乱に陥れたが、一方でそのショックから1ヵ月も満たない中での国政選挙において自民党の勝利という結果は、イギリスのEU離脱という深刻な事態からの影響が現在のところ日本においては殆ど及ぶことはないであろうと世界は観たのではないか。つまり日本における政治経済は安定していると。国家の基盤となるファンダメンタルズの安定は、ファンドをはじめとする投資家の投資先としてはsafe havenつまり適格として再び目が向けられることになった。そのため日本における株価が上昇したと考える。今後特異な事態が生じない限り日経平均株価16,000円を一つの分岐点と考えた場合、当面は株高のまま推移すると考える。
 勢いを取り戻した安倍政権は、これを契機に水面下では政治が介入して為替相場における円安方向へ誘導する政策を駆使してアベノミクスを再び加速させるであろう。例えば政治の金融経済への関与については、「世界」7月号には「黒田バズーカ」の手法等が紹介されている。円の空売りという手法である。これによりマーケットにおける円の流通量が過大になり円安が誘導される。円安は輸出を活性化させ、輸出に頼る日本経済に追い風となり、株価が上昇するということである。
 アベノミクス推進にはさらにきめ細かな配慮が求められるという。外国の投資家が日本で折角利益を得たとしても、通貨を自国に持ち帰る時に通貨レートが変わり時には儲けが得られないという事態が想定されるのである。そこで交換レートをあらかじめ約束しておくとそういう事態は避けられる。これを通貨swapと呼び、通貨swapにより投機筋は日本株の売買における自国通貨への交換が可視化され、為替リスクを避けることを可能にしたのである。つまり日本株に対する様々なリスクが回避されるよう日本政府は手を施してきたのである。これにより日本株は安全と判断され売買が活性化する。日本の株価が上昇するという流れである。アベノミクスのメカニズムの一端である。
 この約束の立会人(保証人)としての役割を果たすのが世界メガバンクシティバンクドイツ銀行バークレイズ銀行JPモルガン・アンド・チェースバンク・オブ・アメリカetc)&ゴールドマンサックスである。彼らはその際の手数料で大儲けしているという。
 メガバンクが常に食指を伸ばしているのは差益と手数料(margin)である。例えば通貨交換レートから派生する為替差益や手数料であり、それを保証するためメガバンクは政治と結びついて法律の制定や改変によって投資を呼び込みやすい状況をお膳立てする。先の通貨swapなどはそれである。身近な例でいうとNISAもそれにあたるであろう。
 そしてこの通貨swapを可能にしているシステムがSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)である。そこでは金融の通信フォーマットを共通化して世界的ネットワークを構築している。これに加盟するメガバンクを中心とする金融機関が時にデータを都合のいいように書き換えるというのである。例えばサブプライムローンの問題が生じた時に決済日の変更を行い、いわゆる飛ばしが実行された。猶予された間に、それにCDS(Credit default swap)すなわち保険をかけ、損失を補てんするという荒業に出ることを可能にしているのである。
 しかし更なる投資の拡大を図ることは世界において極めて困難な状況にあるといえる。資本投資適格な状況には3条件が前提とされなければならない。すなわち、人口増加、フロンティア開拓、技術革新である。
 この3要件への言及は既に世界恐慌後に経済学者アルビン・ハンセンが指摘していた。現代においてこの3要件が満たされにくい状況に直面している。先進国では人口増加が殆ど見込めなくなっているばかりか減少に転じている。日本もその例外ではない。
 フロンティア開拓も大規模な自然開発がCo₂を排出し地球の温暖化現象を招いて、最早限界に達した感がある。歴史において16世紀からスペイン、イギリス、フランスなどの欧州列強や後にアメリカも加わってアメリカ大陸、アジア、アフリカへの侵略によりフロンティアを求め続けてきた。21世紀の今日、宇宙開発を考えない限り地球規模でそれを考えることはほぼ不可能と言っても過言ではなくなっている。
 技術革新は日々目覚ましく発展している。AI(人口知能)に見られるように人間の知能をいずれ凌駕するのではないかと言われるテクノロジーが現れている。例えば今年、囲碁界においてAIが世界王座と言われるイ・ セドル氏に3連勝した。身近な例では携帯から進化したスマートフォンはネット、ライン、フォト、動画、ポケモンGOなどありとあらゆることが出来るといえ、万能ツールとして私たちの身に寄り添うものとなっている。
 とはいえ技術革新がもたらす恩恵が得られるのは人口の増加が今後見込みにくい先進国の人々である。発展途上国においてはそれどころではない。相変わらず飢餓、疫病、内戦等による生命の危機に曝されているのである。先進国でも経済格差が拡大してその恩恵を受けられる者とそうでない者とに別れる状況が顕著になってきている。つまり技術革新が発展したとしても、ふた昔前の日本におけるテレビ、冷蔵庫、エアコンという三種の神器のように爆発的に民衆に購買されるものではないという現状を踏まえなければならない。
 以上経済発展に必要な3要件が今後満たされる素地が最早この世界には存在しづらいものとなっていると私はみる。
 資本はそれでも増殖し続けること、すなわち資本の蓄積を止めようとはしないであろう。止めてしまえば利潤極大を常に追求する純粋資本主義は終わってしまう。実体経済が益々行き詰ってきているというのであれば、今度は金融経済へのコンヴァートをさらに推し進めればいいとなる。これが一般的な企業社会の論理である。モノが売れないのであれば、デリヴァティヴといったtechnostructure(金融工学)を駆使した実体のない金融商品に食指を伸ばし何としても利益を得ようとしなければならない。だがやがてそこにも限界が生じる。経済、資本の行き詰りである。行き場を失った資本は増殖をめざして暴走する。ティロールはそのことを見越していて、しかし金融工学が現実には必要不可欠な既存の状況に理解を示したうえで、モラルを強く問うことを呼びかけたのである。
 資本の暴走とはどういうことか。資本の増殖が臨界点に達する終局のアスペクトにおいては、歴史を振り返ると戦争、例えば30年戦争、ナポレオンによるイタリア、エジプト、ロシアなどへの遠征、近代においては二つの世界大戦その後の冷戦に現れているように、戦争を余儀なくされたのである。終戦後焼野原となりリセットされると、再び資本は同様に増殖することを止めなかった。そして今世界不況に陥り資本の拡張は臨界点に達した感がある。資本はそれでもあがいて利潤を求めて新たな資本を探し回ることにおそらくなるであろう。その行き着く先はやはり戦争だと疑わざるを得ない。戦争は経済勃興には一番手っ取り早い。つまり歴史が証明した通りscrap&buildである。
 イギリスにおいてEUに残留か離脱かを問う国民投票について、投票前には接戦だが国民は良識を持つと信じるので残留する結果になるであろうという論調が多数を占めていた。ところが僅差で離脱への票が上回った。理性で推し量ることのできないこのようなことが生じたのはなぜか。EUに残留した場合、この連合は人間の尊厳に対する敬意、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する権利を含む人権の尊重という価値観に基づくestablishmentの尊重から、移民、難民に対して寛容でなければならなくなる。現在中東からはシリアの人たちが欧州に難を逃れてやってきている。受容しなければならない。すると私たちの仕事が彼らに奪われるかもしれない、あるいは素性がわからないという不安から犯罪の増加を招くのではないかと猜疑心に見舞われ、理性が失われ感情的に自己本位になって他者を排斥するという心理が働いたと私はみる。
 この選択によって、経済問題でいうと通貨ポンドや国内株も下落していることや、そこに目をつけ早速ソフトバンクがイギリスの企業をハゲタカ感覚で3兆円超で買収するなどの動きが見られることになった。また将来の見通しとしては欧州間取引に関税が復活して、イギリス国内の物価の上昇を招くことは必至である。しかしそんなことより何よりも私はイギリス人は利己主義だと宣言したも同然となったことを憂う。イギリス人は正に世界に恥を曝したのである。
 転じて日本について目を向ける。憲法改正、9条改正を国会で審議して決を採れば議員全体の2/3以上の賛成により衆参両議院で可決することが今回の選挙でほぼ可能となった。次は国民への発議を行い、国民投票有権者の過半数の賛同を得られればめでたく自民党の永年の念願であった9条改正が実現することになる。
 私は戦争ができる国になるという強い国に日本がなることを多くの国民は望んでいないはずであると言いたい。なぜなら歴史において、日本は参戦してアジアの国々の人々に虐殺をはじめとする非道残酷な行為を行い、大いなる苦痛を与えたことへの反省や、原爆投下、空襲による日本全土が焦土と化し、類例をみない多くの死者が出たことへの反省から、もう2度と戦争をしてはならない、何よりも平和を希求していきたいと強い誓いを立てたはずだからだ。だから9条改正の発議を行えば国民投票で否決されるとみる。
 しかし楽観はできない。イギリスで起きたようなことが現実に起こる可能性がないとは言えないのである。戦争のできる強い国になって経済不況を何とか打開したい。経済が活性化するのであれば、よその国であれば戦争したって構わない。それに戦地に行くのは自衛隊員であって自分ではないのだから、というようなイギリス国民の間でみられた利己主義という心理が働けばあながち可決されてしまうかもしれないのである。
 そうならないために、私がやっていることの一つは報道番組を必ず視聴することである。私の場合、テレビ朝日の「報道ステーション」である。新聞に目を通すことも同じ効果が得られると思う。とにかく世界に対して意識的になること。会社組織だけでものを考えることは避けてほしい。つまり会社人間にはならないで欲しい。狭い視野しか得られないので、会社組織の外部の人間とはコミュニケーションができない人間になる。実際そんな人を私は何度も見かけてきた。大企業などの社員の中には会社人間が多数おられるかと推測するが、その場合は取引先の相手方と軽い世間話を交わすことをしていただきたい。商談で有利な状況を作り出すことにも一役を担うものとなるので是非行っていただきたい。face to face、最後は人間の顔の見える企業が信用を勝ち取るという経験は全うなビジネスマンであればどこかでしているはずである。ちょっとした雑談を交わすことによって企業によってそのカルチャーは随分と違うものであることを認識するはずである。そして世界は多様なんだと自覚するはずである。その自覚が世界の広がりを他者を認識させることにつながるのである。
 他者も人。人の苦しみを想像できれば戦争は否定されるべきものです。自ずと9条の大切さを我々は知ることになるのです。